大丸札幌店の孔雀
大丸と孔雀とヴォーリズ
大丸と孔雀、それからヴォーリズについては、ご存じの方が多いと思います。ほかでもよく記事を見ますし、なにより大丸松坂屋HPでも説明されていることですから、改めて書く必要もないでしょう。
孔雀のモチーフは心斎橋店、京都店、それから神戸店に設置されています。神戸店のものは、心斎橋のものを模しています。震災復興のときにつくられたんだったかな。大丸のロゴやショッピングバッグの柄も孔雀をモチーフにしています。
心斎橋店の低層部は従来の建築を移植したものですが、高層部はヴォーリズ建築の意匠を踏襲した、アールデコ調のアラベスク模様のファサードです。ヴォーリズ模様とでも呼ぶのでしょうか。同じような模様が他店でも見られます。東京店ではこの模様を用いてクラシカルな雰囲気に統一しているようで、個人的には、大丸と言ったらこの模様というイメージを持っています。
| 大丸東京店1階入口 |
大丸札幌店の大丸らしさ
大丸札幌店は大丸のなかで最も新しい店舗です。札幌駅直結、新幹線からは離れるようですが現在の改札から1分もかからない便利な立地。入店すると、新しく作っただけあって余裕のある店づくりが体感できます。
しかし大丸らしさを感じないような気がするのです。孔雀のモチーフがある店舗は限られます。しかし大丸と言えばクラシカルな雰囲気、ヴォーリズ模様というイメージがあったので、それが見当たらないのが不思議だったのです。
コリドールが神戸店、高層部のファサードが心斎橋店を引用していることを知りませんでしたから、その時は感動しました。入口の扉の鋳物が孔雀の羽の模様であることに気づいたのです。
| 大丸札幌店入口扉 |
そう思って見てみると、店内の柵にも、まさに孔雀の羽のような模様が使われています(店内で写真を取るのはなんとなく憚られて、写真に残していません)。柱に取り付けられた電灯もそれに見えなくもないような。あざとさを感じさせず、さり気なくシンボルを取り入れているのってとても素敵だと思います。コリドールにある模様は当初は天井のアーチに合わせて適当につけた柄だと思っていましたが、もしかするとこれも孔雀の羽かな?
| 大丸札幌店コリドール |
クラシック&モダンの流れ
聞くほどのことではなかったかもしれませんが、なんとなくずっともやもやしていたので問い合わせました。大丸札幌店では確かに孔雀の羽のデザインを随所にあしらっているようです。すると、阪神淡路大震災から復興した神戸店を手本に、クラシック&モダンな店作りをしていることまで、関係部署に確認をとって教えてくださいました。面倒な問い合わせであったと思うのですが、丁寧に対応してくださいました。
札幌店の開業が2003年、神戸店の復興が1997年。確かにコリドールがあるのは神戸店さながらです。京都店のリニューアル時には、神戸店、札幌店に次ぐ「ネオ・クラシック」(クラシック&モダンと意味は違わないと思います)と謳われていました。神戸店→札幌店→京都店という系譜があるのですね。大丸京都店リニューアル時のプレス
| 大丸札幌店外観 神戸店ゆずりのコリドール |
後日、大丸神戸店の本館の建築に関する記事を見つけました。月刊近代建築1997年4月号です。旧居留地の町並みに合わせて御影石を貼ったコリドールを作ったことや、高層部は20世紀初頭の近代百貨店のデザインを引用していることが書かれていました。新しい建物の外装は、建て替えられなかった建物にも貼り付けて外装を統一したそうです。何より、味気ない外観の百貨店もあるなかで、建て替えにあたっては外観にも気を配られ、それが他の店舗にも受け継がれていったことを知ると、なんとなく愛着が湧くものです。